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構造的アプローチ:シュロスバーグの理論(4-Sモデル)

ナンシー・K・シュロスバーグ(Schlossberg, Nancy 1929-)。アメリカを代表する理論化・実践家メリーランド大学でカウンセラー教育に携わったのち、同大学名誉教授・コンサルタント・グループの代表に就任。1999年に全米キャリア開発協会(NCDA)会長を務める。

​シュロスバーグは、人生の大きな変化である「転機」を乗り越える方法を体系化しています。その転機は年齢や発達段階によって誰もが平等に経験するものではなく、個々の人生の様々な時期で固有に発生するものだとしています。

その転機がもたらす変化を克服するために「変化を見定める」「リソースを点検する」「受け止める」の3ステップがあるとし、なかでも重要な「リソース」を4つの「S」(4-Sモデル)で整理しています。人生には多様な転機が連続的に訪れ、それを乗り越える努力や工夫をすることを通じて、キャリアが形成されていく考えを示しています。

様々な出来事に対峙しながら私たちは人生を歩んでいきますが、何が「転機」かを認識するためには、転機がどのようなものかを理解する必要があります。シュロスバーグは転機には「イベント」「ノンイベント」の2つがあるとしています。

●イベント:実際に起きた予期していた/していなかった出来事

●ノンイベント:起きてほしいと思っていて、実際には起こらなかった出来事

イベントは、例えば就職・転職・失業・結婚・離婚・出産・親との死別などがあげられます。予期しやすい就職・転職・結婚・出産、予期しにくい失業・離婚・親との死別などのように、予測のしやすさでさらに2分することができます。

ノンイベントは、就職や結婚などで、できる/したいと思っていたができなかったという出来事のことで、実際には変化が起こらないわけですが、生き方に大きな影響を及ぼすという点ではイベントと同様に転機ということができます。

このように転機を捉え、転機がもたらす変化を客観的に把握することが重要です。ではこれらの転機がもたらす変化には、どのようパターンが考えられるのでしょうか。シュロスバーグは以下の4つをあげています。

転機の真っただ中で、冷静に自分を客観視することは簡単なことではありませんが、「転機」と「もたらされる変化」についての理解が、それを助けてくれます。

転機がもたらす変化をどのように乗り越えるかがシュロスバーグの理論の核であり、私たちにより良いキャリア形成のヒントを与えてくれ実用的な部分でもあります。

シュロスバーグは転機による変化を乗り越えるために活用できる力を「リソース」と呼び、それぞれの頭文字が「S」であることから「4-Sモデル」としてまとめています。

重要なことは、状況・自己・支援について点検をした結果、転機による4つの変化が引き起こすマイナスの影響を最小限に留め、プラスに変えていくような戦略を立て、実行することです。

転機によりつくられた状況を冷静に分析し、それに対する自己の感情・反応を理解し、自分以外からどのような支援を受けられそうかを整理した上で、変化を乗り越え戦略を考えました。

最後の「受け止める」の段階では、それを具体的な行動計画に落とし込み、期限を設定し、実行に移していきます。

例えば「会社の倒産に伴う失業」という転機に直面し、これまで尽くしてきた自分を裏切った会社に、恨みの感情を持っている人。

時間をおいて冷静に考えると、自分も会社の業績を担っていた一員であることに気付く。倒産は時間の問題であったことを考え直し、自分からは積極的に動けない性格の自分にとってはその時期が早く訪れ、転職の可能性が開けたことを幸運であると捉えなおす。

何もアクションせずに、もはや存在しない会社の愚痴をこぼしても仕方ない。

半強制的に転職活動を開始することにし、外的リソースに目を向けると就活の相談に乗ってもらった両親、転職経験のある友人、無料の転職支援サービスなど多くのリソースが存在し、支援してもらえそうなことに気付く。

初めての転職活動なので、まずはプロである専門家の話を聞くために、早速転職支援サービスへ登録。その前に自分のことを客観視させてくれる両親に会う。最後に、専門家のアドバイスに加え、転職経験のある友人にも意見をもらおう。

転機を段階的に少しずつ、確実に乗り越えていくイメージです。

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