構造的アプローチ:パーソンズの職業選択モデル
フランク・パーソンズ(Parsons.Frank)。アメリカの社会革命運動家。1908年に、ボストン職業相談所を開所し、職業カウンセリングを開始。キャリア・カウンセリングの起源は、この「職業指導運動」だとされています。
19世紀後半アメリカでは産業革命により急速な経済成長と産業集中が起こっており、人々の仕事環境や生活環境にも大きな変化がありました。ヨーロッパからの移民や、地方から都市への人口流入などから過酷の労働環境のなか、スラム街で貧困生活を送る労働者も少なくありませんでした。
そのような時代に、職業指導運動に携わっていたパーソンズは定職に就くまでに幾度となく転職を繰り返す人々に注目し、技能不足だけではなく、場当たり的な職探しをしていることが真の原因であることに気付きました。
数々のカウンセリング実体験と問題意識をもとにパーソンズが提唱したのが、科学的な職業選択モデルアプローチである「職業相談モデル」です。
1909年5月、他界したパーソンズの意思を継ぎ、弟のアルバートソンによって完成された「職業の選択(Choosing a Vocation)」に記されています。
パーソンズの職業選択モデルのアプローチは下記3つの仮説に基づいているといわれています。
[仮説1]各個人は必ずほかの人とは違う能力、または特性を持っている。しかもこの能力・特性は測定が可能である。
[仮説2]個人は自分の能力・特性に最も相応しい職業を選択する。
[仮説3]個人の能力・特性と職業に求められるスキルが一致すればするほど、 個人の仕事における満足度は高くなる。
無数にある世界中の職業が選択できるようになり、かつ職業の細分化・高度化・専門化が進む現代では、[仮説1]も[仮説2]も前提として置くには心許ない気がしますが、当時の時代背景を踏まえると妥当な仮説だったのかもしれません。そして何よりも、検証の時間軸が長く、原因と結果の因果が曖昧なキャリアを理論化するには、まず仮説を立てることが重要だったのでしょう。
上記3つの仮説に基づいて、パーソンズは下記のようなカウンセリングの3段階プロセスを提唱しています。
※参考:GCDF-Japan キャリアカウンセラートレーニングプログラムテキストブック
20世紀初頭に起こった職業選択の自由を背景に考案されたこのパーソンズのモデルは、現在のキャリア・カウンセリングの礎を築いていると言えます。キャリアカウンセラーの中で、キャリアを考える際によく用いられるシンプルな枠組み「WILL(やりたいこと)」「CAN(できること)」「SHOULD(すべきこと)」も、自己理解(WILL、CAN)と仕事理解(SHOULD)に沿うモデルであると言えます。