発達的アプローチ:ブリッジスのトランジション理論
ブリッジス(Brisges, William 1933-)。米国の心理学者。大学教授を辞し、トランジションのセミナーを開いて成功。人間性心理学会の会長もつとめた。会社や組織がトランジションをいかに乗り切るかの研究にも取り組み、コンサルティングも実施。
ブリッジスは、年齢に関わらずトランジション(人生の節目)は起こるというスタンスに立っています。そして発生プロセスに着目し、「何かが終わる時」「ニュートラル・ゾーン」「何かが始まる時」の3段階のプロセスで分ける考え方を提唱しました。
※トランジションとは人生の節目のことであり、「過渡期」や「転機」と呼ばれます。具体的には「進学」就職「結婚・離婚」「転職」「死別」など、物事が大きく変化する時期を指し、人生のターニング・ポイントになる、キャリアを考える上で重要な出来事です。誰もが直面し、変化し成長していくために乗り越える必要のあるものとされています。
前で述べたように、トランジションには以下の3段階があるとしています。
ブリッジスは「何かが終わる時」が転機の始まりであるとしていますが、その段階は「離脱」「アイデンティティの喪失」「幻滅」「方向感覚の喪失」の4要素に分解されます。
●離脱:自分が置かれていたこれまでの環境や立場から離れる。
ex.会社を退職する。
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●アイデンティティの喪失:離脱により、自分が何者であるか分からなくなる。
ex.職場の立場・役割を失い、働いていない人になる。
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●幻滅:これまで抱いていた考え方や価値観が失われたことによる落胆。
ex.これまで自分はなぜ働いてきたのか?という意味を振り返る。
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●方向感覚の喪失:将来の計画や目標を失う。 ex.自分がこの先やりたいことなどがわからなくなる。
そしてトランジションにおいて最も重要な時期だと位置付け、次のステップに進むために何が必要かを見い出す「ニュートラル・ゾーン」に続いていきます。そのニュートラル・ゾーンを乗り越えるための6つのアクションを提示しています。
1.1人になれる特定の時間と場所を確保する 2.ニュートラルゾーンの体験の記録を付ける 3.自叙伝を書くために、ひと休みする 4.この機会に、本当にやりたいことを見いだす 5.もしいま死んだら、心残りは何かを考える 6.数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する
状況から逃げずに留まり、自分自身と徹底的に向き合う時間を意図的につくりだす重要性を伝えています。このようにニュートラル・ゾーンを十分に体験することが、「何かが始める時」への準備につながります。この準備が、偶然の新たな始まりを引き寄せます。