発達的アプローチ:エリクソンの発達理論
エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik Homburger Erikson, 1902年-1994年)。アメリカの発達心理学者で、精神分析家。A.フロイトより児童精神分析家としての訓練を受ける。1933年渡米後、ハーバード大学などで臨床・教育に従事。
出生から死に至るまでの生涯を発達と捉える「生涯発達」の考え方をもとに、その生涯にわたる過程を、自我と現実との関係の中でアイデンティティを形成していく過程であると捉えます。
アイデンティティは「自我同一性」や「自己同一性」などと訳され、「自分は何者で何をなすべく生まれたのか」という個人の心の中に保持される概念です。「ある特定集団への帰属意識」「特定のある人・ものであること」などの意味でも用いられることもある言葉のようです。
エリクソンはこのアイデンティティを、以下3つによって定義される自己意識の総体だとしています。
【自己の斉一性】
自分はまぎれもなく独自で固有な自分であり、いかなる状況においても同じその人であると他者から自分で認められること。
【時間的な連続性と一貫性】
以前の自分も現在の自分も一貫して同じ自分であると自覚すること。
【帰属性】
何らかの社会集団に所属しそこに一体感を持つとともに、他の成員からも是認されていること。
そしてエリクソンの発達理論では、人間の一生(ライフサイクル)を8つの段階に分け、それぞれの段階で獲得すべき課題を設置する独自の理論を提唱しました。
エリクソンは人間の一生(ライフサイクル)を8つの段階に分類し、各段階には心理・社会的危機があり、肯定的側面と否定的側面を対で設定しています。そして否定的側面の克服は肯定的側面の獲得につながるとの主張をしています。危機の克服を「発達課題」と想定し、その克服から得られるものを「基本的強さ」とし、克服できなかった場合にどのような問題が生じるかについても整理がされています。
それらを一覧にまとめたのが、以下の表になります。
※参考:GCDF-Japan キャリアカウンセラートレーニングプログラムテキストブック
各発達課題は、次の発達課題を獲得するための基礎にとなり、各段階における発達課題を克服しながら、次の段階に進むものだとしています。またある段階で克服できなかったとしても、後に獲得し直すことも可能とされています。
時代や個々人の人生によって各段階を迎える年齢に差が生じていることは容易に想定できますが、自分が今現在どの段階にいて、どのような課題と対峙し、何を獲得していくべきなのかを考えるためのガイドとすることができる理論です。