D.ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図(2015)
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン (著), 池村 千秋 (翻訳)
全4部で構成されています。
第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?
第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実
第3部 「主体的に築く未来」の明るい日々
第4部 働き方を<シフト>する
2025年の未来にどのような環境変化が起こり、ネガティブ・ポジティブそれぞれでどのような未来が描けるのか、そしてポジティブな未来を実現するために、私たちにどのようなシフトが必要かを記しています。未来を形づくる五つの要因として、以下が紹介されています。
テクノロジーが飛躍的に発展する
世界の五〇億人がインターネットで結ばれる
地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる
生産性が向上し続ける
「ソーシャルな」参加が活発になる
知識のデジタル化が進む
メガ企業とミニ起業家が台頭する
バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
「人工知能アシスタント」が普及する
テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
二四時間・週七日休まないグローバルな世界が出現した
新興国が台頭した
中国とインドの経済が目覚ましく成長した
倹約型イノベーションの道が開けた ※途上国で低コストでイノベーションが成し遂げられる
新たな人材輩出大国(中国・インドなど)が登場しつつある
世界中で都市化が進行する
バブルの形成と崩壊が繰り返される
世界の様々な地域に貧困層が出現する
Y世代(1980~95年生まれ)の影響力が拡大する
寿命が長くなる
ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
国境を超えた移住が活発になる
家族のあり方が変わる
自分を見つめ直す人が増える
女性の力が強くなる
バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
大企業や政府に対する不信感が強まる
幸福感が弱まる
余暇時間が増える
エネルギー価格が上昇する
環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる
これらの要因からネガティブ・ポジティブな6つの未来のシナリオが描かれています。
いつも時間に追われ続ける未来(三分刻みの世界がやってくる)
孤独にさいなまれる未来(人とのつながりが断ち切られる)
繁栄から締め出される未来(新しい貧困層が生まれる)
コ・クリエーションの未来(みんなの力で大きな仕事をやり遂げる)
積極的に社会と関わる未来(共感とバランスのある人生を送る)
ミニ起業家が活躍する未来(創造的な人生を切り開く)
その上で、3つの働き方のシフトが重要だとまとめられています。
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
約400ページの読み応えある一冊です。第1部~第3部は目次と流し読みで概要をつかみ、第4部から読み始める順序でもよいかと思います。第4部で納得感が薄い個所は、根拠を示す第1部~第3部に戻ることができます。
グローバルに起こっている環境の変化を土台に、大胆にも2025年の未来を予測しています。具体的なシナリオの提示と共に、未来に向けて求められる働き方のシフトが示されており、この先のキャリアの大きな方向性を考える参考になります。
未来の変化を予測するだけではなく、その変化に対してどう具体的に対応すべきかという提言が詳細になされています。能力開発・関係構築・人生観の確立の切り口から、自分がこれからすべきアクションを考えることができます。