信号無視に備えるキャリア
横断歩道で信号待ちをしていたときのことでした。
同じく信号待ちをするイヤホンをしながら携帯操作をしていた男性。
歩行者信号が青に切り替わった瞬間に、スマホ画面に目を落とし、そのまま横断歩道を渡り始めました。
スマホ歩きが社会問題になるよう時代、今となっては決して珍しい光景でもないのですが、なぜかその瞬間に強い違和感と共に危険を感じました。
一体、なぜなのでしょうか。
余程強い違和感だったのか、その日の夜に思い返していました。
イヤホンをしながらスマホを見る行為が危ないのか。確かに五感のうち、聴覚と視覚、触覚、操作の種類によっては意識まで取られている状態なので、自分の外に注意が向いていないことによる危険性はあります。ただ繰り返しますが、良し悪しはともかく、その光景も見慣れたもの。
ではなぜ危険を感じたのか。
その答えは、「歩行者信号が青に切り替わったこと=横断歩道を渡っていいこと」だと盲目的に信じ込んでいることに対して危険だと感じていたのでした。
社会のルールでは「信号が青なら渡ってよし」と言えますが、事故が起こる多くの場合は、車か歩行者のいずれかが信号無視をしたときです。(かなり)大袈裟に言えば、命を懸けて横断歩道を渡る選択をしているにも関わらず、その判断を一般的に決められたルールに委ねてしまっている。
このことに対して、強い違和感と危険性を感じたのでした。
命を大切にするのであれば、見るべきものは歩行者信号ではなく、車両側の信号が赤色に変わっているか、さらには先頭の車に注意散漫なドライバーが乗っていないか、スピードを落とさない車両はないかなどを確認するべきだと思います。
キャリアでも、歩行者信号しか見ずに横断歩道を渡るケースがあるように思います。
例えば、自分がやりたいことや得意なこと(歩行者信号)ばかりに取り組んでいたところ、外部環境の変化(車両信号)により、事故が起こってしまうようなケースです。
英語が得意で翻訳を仕事にしていた人は、スマホで同時通訳できるアプリの開発動向は気にしておく必要があります。運転を生業にしている人は、そう遠くない自動運転が実現される未来を見据えておかなければなりません。遠い将来に、遺伝子工学が医療行為を不要とするかもしれません。
人工知能やロボット、IoT(Internet of Things)などのテクノロジーは、進化のスピードが速くドラスティックな変化を引き起こすため、特に注目すべき車両信号です。しかし歩行者信号しか視界に入れず、キャリアを考えている場合、予期せぬ事故に巻き込まれる可能性は決して低くないと思います。
キャリアは必ず社会とのつながりの中で構築されていきます。
ということは、私たちのキャリアも必ず社会環境の変化から影響を受けるのです。
そして、外部環境はいつでも、信号無視をしながら変化してきます。
「自分の仕事が急に無くなるわけがない」「仮に代替手段ができたとしても組織は自分の雇用を守ってくれる」「目の前のことを一生懸命取り組んでいさえすれば報われる」などの一般的な価値観や常識という名の思い込みに、大切なキャリアを委ねていませんか。